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  • 医療機関向けカルテの保存期間とは?法律と適切な管理方法を解説

     
    カルテの保存期間、それは医療機関にとって重要な課題です。
    医療法や関連法規に基づき、適切な保存期間と方法を理解することは、医療機関の運営上、そして患者さんの権利保護の観点からも不可欠です。
    紙カルテと電子カルテ、それぞれの保存方法の違いや、電子署名・タイムスタンプの役割についても理解を深める必要があります。
    本記事では、カルテ保存期間に関する法律や規則、具体的な保存方法、そして閉院時の対応まで、網羅的に解説します。
     

    カルテ保存期間と法律上の義務

     

    医師法と歯科医師法における規定

     
    医師法および歯科医師法では、診療録(カルテ)の保存義務を5年間と定めています。
    この期間は、治療が完了した日から起算されます。
    治療が継続中の場合は、完結の日から5年間の保存義務が適用されます。
    保存義務を怠ると、罰則が科せられる可能性があります。
     

    保険医療機関及び保険医療担当規則の解釈

     
    保険医療機関及び保険医療担当規則では、療養の給付に関する帳簿や書類などの保存期間についても規定されています。
    診療録以外の書類は、原則として3年間の保存義務があります。
    ただし、特定の書類については、保存期間が異なる場合があります。
    例えば、特定生物由来製品に関する記録は20年間の保存義務があります。
     

    診療録以外の書類の保存期間

     
    診療録以外にも、処方箋、検査結果、レントゲン写真、手術記録、看護記録など、様々な書類の保存期間が法律で定められています。
    これらの書類の保存期間は、書類の種類によって異なります。
    一般的には、3年間の保存義務が多いですが、一部の書類は5年または20年の保存期間が定められています。
     

    保存期間を遵守しない場合のリスク

     
    カルテ保存期間の遵守は法律で義務付けられており、これを怠ると罰則が科せられます。
    罰金は50万円以下とされています。
    また、保存期間を過ぎたカルテの破棄は、患者情報の漏洩リスクを高めることにもつながります。
     

    カルテ保存期間に関するよくある質問

     
    Q.カルテ保存期間は、治療が完了した日から5年間ですか?
    A.はい、治療が完了した日から5年間です。
    治療が継続中の場合は、完結の日から5年間となります。
     
    Q.紙カルテと電子カルテの保存方法に違いはありますか?
    A.紙カルテの場合は、適切な場所に保管し、紛失・破損を防ぐ必要があります。
    電子カルテの場合は、電子保存の三原則(真正性、見読性、保存性)を遵守する必要があります。
     
    Q.閉院する場合、カルテはどうすればよいですか?
    A.承継先医療機関があれば、承継先に引き継ぎます。
    承継先がない場合は、院長が責任を持って5年間保管する必要があります。
    管理者が亡くなった場合は、保健所などの公的機関が管理するのが適切です。

    電子カルテと紙カルテの保存方法と注意点

     

    紙カルテの保存方法と課題

     
    紙カルテは、適切な保管場所を選び、温度や湿度を管理する必要があります。
    また、紛失や盗難、火災などのリスクに備える必要があります。
    紙カルテの保管場所としては、施錠可能な保管庫などが適切です。
     

    電子カルテの保存方法とメリット

     
    電子カルテは、サーバーやNASなどの機器に保存します。
    電子保存の三原則(真正性、見読性、保存性)を遵守し、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。
    電子カルテのメリットとして、検索や閲覧が容易であること、保管場所の節約ができること、災害時にもデータが比較的安全に保存できることが挙げられます。
     

    電子署名とタイムスタンプの重要性

     
    電子カルテやスキャンした紙カルテのデータは、電子署名とタイムスタンプを付与することで、法的証拠としての効力を持ちます。
    電子署名は、データの作成者や編集者を特定し、改ざんを防止する役割を持ちます。
    タイムスタンプは、データの作成日時を記録し、改ざんを検知する役割を持ちます。
     

    電子カルテシステムの選定における注意点

     
    電子カルテシステムを選ぶ際には、セキュリティ機能、保存性、操作性、機能性などを考慮する必要があります。
    信頼できる業者を選び、導入後のサポート体制も確認することが大切です。
    また、電子保存の三原則を確実に満たせるシステムであることを確認しましょう。
     

    電子保存の三原則

     
    電子保存の三原則とは、真正性(改ざんされていないこと)、見読性(読み取り可能な状態であること)、保存性(データが失われないこと)です。
    これら三原則を満たすことで、電子カルテのデータが法的証拠として認められます。
     

    紙カルテから電子カルテへの移行手順

     
    紙カルテから電子カルテへの移行は、スキャン、データ入力、データ検証、システム導入、旧カルテの廃棄という手順で行われます。
    個人情報保護に十分配慮し、専門業者に依頼することも検討しましょう。
     

    データ化後の紙カルテの廃棄方法

     
    データ化後の紙カルテは、シュレッダーで裁断するか、専門業者に委託して廃棄する必要があります。
    個人情報保護のため、厳重な手順に従う必要があります。
     

    閉院時のカルテの取扱い

     
    閉院する際は、カルテの保存期間(5年間)を考慮し、承継先医療機関に引き継ぐか、責任者本人が保管する必要があります。
    管理者が亡くなった場合は、公的機関に保管を委託することが推奨されます。

    まとめ

     
    医療機関におけるカルテの保存期間は、法律で定められています。紙カルテと電子カルテ、それぞれに適切な保存方法と注意点があります。
    電子署名やタイムスタンプは、電子カルテの法的証拠能力を担保する上で非常に重要です。
    閉院時のカルテの取扱いについても、法律やガイドラインに基づいた対応が求められます。
    本記事で解説した情報を参考に、医療機関の状況に合わせた適切なカルテ管理体制を構築しましょう。
    患者さんのプライバシー保護と医療の質の向上のため、正確な情報に基づいたカルテ管理を心がけてください。
    法律や規則は変更される可能性もあるため、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。
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